ズボンの裾がほつれてしまったり、急ぎで裾上げをしたい場面に困った経験はありませんか。お店に出すと時間もお金もかかるため、自分で直せたらと思う方も多いはずです。
そんなときに役立つのが「まつり縫い」。表から縫い目がほとんど見えず、既製品のようにきれいに仕上がるのが大きな特徴です。
この記事では、基本となる「流しまつり縫い」の手順を中心に、素材別のコツ、失敗しないためのポイントまで、写真付きでわかりやすく解説します。
※写真は手順が伝わりやすいよう、糸色をあえて生地と同色にせず撮影している場合があります。実際に縫う際は、生地に近い色を選ぶと縫い目がより目立ちにくくなります。
■まつり縫い(手縫い)とは?基本の特徴と種類
まつり縫いとは、布の折り目に沿って、表側に糸が目立ちにくいように少しずつすくいながら縫う手縫いの方法です。
縫い目が表に出にくく、仕上がりがすっきり見えるのが、まつり縫いのいちばんの魅力。用途や仕上がりの違いによっていくつか種類があり、代表的なものに「流しまつり」と「たてまつり(普通まつり)」があります。
なぜ裾上げに使われる?縫い目が目立ちにくい仕組み
まつり縫いが裾上げに使われる理由は、表布をほんの少しだけすくって縫うことにあります。縫い目の中心は裏側にでき、表側には“点”のようにわずかに見える程度で済むため、遠目にはほとんど目立ちません。
ズボンやスカートの裾など、見た目をきれいに仕上げたい部分に向いています。
よく使う「流しまつり」と「たてまつり(普通まつり)」の違い
まつり縫いの中でも、特によく使われるのが「流しまつり」と「たてまつり(普通まつり)」です。
仕上がりのやわらかさを重視するか、しっかり固定したいかで使い分けるのがポイントです。
・流しまつり:斜めに糸を流すようにすくい、柔らかく自然に仕上がる
流しまつりは、縫い目を斜めに流すようにすくいながら縫う、まつり縫いの中でも最も一般的な方法です。
表布をほんのわずかにすくい、糸に少し動きを持たせて縫うため、生地の柔らかさを損ないにくく、自然な仕上がりになります。
ズボンやスカートの裾上げなど、「見た目をきれいに仕上げたい」「動きに合わせてなじませたい」部分に向いており、まつり縫いが初めての方にも取り入れやすい縫い方です。
・たてまつり:袖口や裏地など、固定力を高めたいときに便利

たてまつり(普通まつり)は、縦方向に糸が渡るように縫い進めるまつり縫いの方法です。
布同士をしっかり固定しやすく、ズレにくいのが特徴で、安定感のある仕上がりになります。
袖口や裏地、動きが少ない部分、または固定力を重視したい裾などに適しており、耐久性を高めたい場合におすすめの縫い方です。
仕上がりの柔らかさよりも、しっかり留めたい場面で活躍します。
■道具と下処理
まつり縫いをきれいに仕上げるためには、縫い方だけでなく、道具選びや下処理も重要です。適した道具を使い、折り目をしっかり整えておくことで、縫いやすさがぐっと増し、仕上がりも安定します。
ここでは、まつり縫いに必要な基本の道具と、縫う前に行っておきたい下処理のポイントを解説します。
必要な道具(針・糸・躾糸・待ち針・定規・アイロン)
まつり縫いに必要な道具は特別なものではなく、家庭にある基本的な裁縫道具で十分です。
主に使うのは、手縫い用の針と糸、躾糸、待ち針、定規、アイロンです。針は生地に合ったものを選びましょう。布帛(織物)には細めで先のとがった針が扱いやすい一方、ニットやジャージなど伸縮性のある素材では、糸を割りにくい先が丸いタイプ(ニット用・ボールポイントなど)を選ぶと安心です。
また、アイロンは折り目をきれいに整えるために欠かせない道具です。
糸と針の選び方(生地の厚さと色に合わせる重要性)
まつり縫いは「縫い目を目立ちにくく仕上げる」ことが大きな目的なので、針と糸は“生地の厚み・風合いに合っていて、かつ目立ちにくいもの”を選ぶのが基本です。
厚手だからといって必ず太い針・太い糸にすると、生地によっては針穴や縫い穴が表に目立ってしまうことがあります。
まずは「強度」と「目立ちにくさ」のバランスで選ぶ意識を持つと失敗しにくいです。
仕上がりはアイロンで決まる!折り目の付け方としつけ
まつり縫いは、縫う前の下処理によって仕上がりがほぼ決まると言っても過言ではありません。裾の折り目は定規で測りながら整え、アイロンでしっかりと折り目をつけておきましょう。
折り目をつけた後は、躾糸や待ち針で固定しておくと、縫っている途中でズレにくくなります。このひと手間をかけることで縫い目が安定し、失敗もしにくくなります。
■まつり縫いの基本手順(流しまつり縫い)
流しまつり縫いは、表から縫い目が目立ちにくく、やわらかい仕上がりになる縫い方です。ここでは迷わず進められるように手順を順番に紹介します。
ステップ1:針に糸を通し、玉結びを布の裏に隠す

まず糸を40〜50cmほど取り、針に糸を通し、糸端に玉結びを作ります。
次に、縫い始めたい位置の折り代の内側(表布と折り返した布が重なっている部分)に針先を入れ、針を出します。こうすると玉結びが布の内側に引き込まれ、表側から見えにくくなります。
最後に糸を軽く引いて、布がつれない程度で止めれば準備完了です。
ステップ2:折り代の裏から針を出し、表布をわずかにすくう

折り代の裏側から針を出し、表布は織り糸を1〜2本ほど、ほんの少しだけすくう(拾う)ようにします。このとき、表布を深く刺さず、布の表面をなでるような感覚で針を動かすのがポイントです。
ステップ3:進行方向に針を進め、等間隔で繰り返す

その後、5〜7mmほど進んだ位置から再び折り代の裏に針を入れ、表布をほんの少しすくい、また裏側へ針を戻します。この一連の動作を繰り返しながら縫い進めていきます。

また、縫い目を等間隔にすることで仕上がりがすっきりと見え、糸を引きすぎず、少し余裕を持たせることで、生地がつれにくくなります。
ステップ4:最後は玉止めをして、糸端を布の間に隠す

最後のひと針を終えたら、折り代の内側(表布と折り返した布が重なっている部分)で玉止めをします。
ほどけが心配な場合は、同じ場所でもう一度玉止めをくり返して二重にすると安心です。
玉止めができたら、糸端が表に出ないように隠します。針を折り代の内側に入れ、布の中を1〜2cmほどすべらせるように通してから針を出します。
糸を軽く引いてなじませてから糸端をカットすると、切り口が折り代の中に収まり、表から見ても糸端が目立ちにくくなります。
最後に、仕上げとして躾糸(解説画像ではピンク色の糸)を外せば完成です。
■きれいに縫うための3つの重要テクニック
まつり縫いは、基本の手順を守るだけでも仕上げることはできますが、少しのポイントを意識するだけで、仕上がりの印象が大きく変わります。
ここでは、初心者の方でも取り入れやすい、縫い目を目立たせにくくし、全体をきれいに仕上げるための3つのテクニックを紹介します。
表に響かない「すくい方」の感覚をつかむ
縫い目が表に出にくく、仕上がりがすっきり見えるのが、まつり縫いのいちばんの魅力です。
まつり縫いでは、表布をどれくらいすくうかが、仕上がりに大きく影響します。
表から糸が見えないようにするためには、布を深く刺さず、織り糸をほんの少しだけ拾うような感覚で針を動かすのがポイントです。
慣れないうちは、縫い進めながら時々表側を確認し、「糸が出すぎていないか」「表布をすくいすぎていないか」をチェックすると感覚がつかみやすくなります。
縫い目の間隔は等間隔に
縫い目の間隔がそろっていると、仕上がりがすっきりと見えます。
5〜7mmほどを目安に、同じテンポで縫い進めることで、自然と間隔がそろいやすくなります。
縫い進めながら折り代のラインを確認し、間が大きく空きすぎていないかを意識すると、失敗しにくくなります。
糸がつれない「引き加減」の調整方法
糸を強く引きすぎると、生地が引っぱられてつれやすくなります。糸は最後に軽く整える程度の感覚で、引きすぎないようにしましょう。
布の動きを妨げないことが、きれいに仕上げるためのポイントです。
■素材別・シーン別の実践ポイント
まつり縫いは基本のやり方を覚えれば、さまざまな素材に応用できますが、生地の種類によって意識したいポイントが少し異なります。
ここでは使われる素材やシーン別に、綺麗にまつり縫いを仕上げるための実践的なコツを紹介します。
ローン生地などの薄手の布(ブラウス・綿):細い針と糸で優しく縫う
薄手の布は、針や糸が太いと縫い目が目立ちやすくなります。
細めの針と糸を使い、表布をすくう量も控えめにすることで、きれいに仕上がります。
また、力を入れすぎるとつれやすくなるため、軽い力で縫い進めるのがポイントです。
太番手などの厚手の布:丈夫な糸を使い、段差を意識する
ウールなどの厚手の布は、細い糸を使うと切れやすくなることがあります。厚手用の糸を選び、糸を引きすぎないように縫い進めましょう。
また、裾の折り返し部分は段差が出やすいため、針を入れる位置をそろえることで、仕上がりが安定します。
伸縮する布(ニットやストレッチ性の布):糸にゆとりを持たせて切れるのを防ぐ
伸縮性のある布は、糸を強く引くと生地の動きに耐えられず、糸切れやつれの原因になります。また、縫うときは、糸に少しゆとりを持たせ、布の動きを妨げないようにすると安心です。
縫い終えた後に軽く伸ばして確認すると、仕上がりの違和感にも気づきやすくなります。
色が濃い・柄物の布:糸選びで目立ちにくくする工夫
濃い色や柄物の布では、糸の色選びが仕上がりに大きく影響します。完全に同じ色でなくても、生地に近い色を選ぶことで、縫い目が目立ちにくくなります。
迷った場合は、少し暗めの色を選ぶと、表から見たときになじみやすくなります。
■まとめ
まつり縫いは、ミシンを使わずに裾上げや裏地をきれいに仕上げたいときに役立つ、手縫いの方法です。基本の手順を押さえ、糸のすくい方や引き加減に注意することで、縫い目を目立ちにくく仕上げることができます。
また、布の厚みや素材に合わせて糸や縫い方を選ぶことで、仕上がりの安定感も高まります。
今回紹介したポイントを参考に、用途や素材に合わせたまつり縫いを取り入れてみてくださいね。
