リネンの原料、フラックス畑について│良質なフラックスはヨーロッパが生み出す

  • 2021年8月19日
  • 2023年4月18日
上空からのフラックス畑

リネンの原料、フラックス畑について

リネンはフラックス畑で栽培される植物性の天然繊維。
ワインや食物のようにその年年の気候によって品質が左右される繊細な植物です。
今回は、そのフラックスとはどのようなものなのか。
フラックス畑の主産地などをご紹介していきます。

 

フラックスの質にこだわるヨーロッパの人々

ヨーロッパの人々はリネンの原料、フラックスの質にこだわります。
一般の方たちはリネン製品の質にこだわり、それがフラックス畑を管理している生産者のフラックス品質へのこだわりに繋がります。
その理由は、ヨーロッパの人々は、リネン製品だけでなく、家、服、道具、家具などを日本人に比べて非常に長く、大切に使い続けることから、品質へのこだわりが求め続けられるようになっているようです。
そのため、求められ続けることからヨーロッパでは、常に上質なフラックス、そして上質なリネンであり続ける必要があります。
しかし、フラックスは植物であるため、気候や気温などによって育ち方や質が大きく異なってくるのです。
上質なフラックスを作り続けるのは容易いことではないのです。

ヨーロッパ町並み

 

日本の市場にあるリネンはどうなのか

日本には様々な産地のリネンが販売されています。
フレンチリネン、ベルギーリネン、コルトレイクリネン、アイリッシュリネンなど他にもあります。
良質でずっと使いたいリネンは、日本で織り上げた日本製のリネンがよく、中国などで織り上げたリネンは混合物が多い場合があることなどから、良質とは言えない場合もあります。
ヨーロッパで紡績され、ヨーロッパで織り上げたリネンなどは有名で高品質なものも多くありますが輸出、輸入などの関係もあり、非常に高価なリネンとなってしまいます。
それに比べ、日本製のリネンは中国製などの海外製に比べて高価ではあるものの、品質は確かなものが多い事が特徴です。
日本の繊維を織る技術や染色を行う技術は繊細で、世界的にも魅力があると言えます。

 

フラックスの栽培はヨーロッパが主産地

リネンの原料となるフラックスの生産は世界的に見ても圧倒的にヨーロッパが盛んな場所。
全世界の生産量、約9割程度の割合でヨーロッパのフラックスが使用されています。
それでは、ヨーロッパでのフラックス生産における流れをみていきます。

 

 

種を蒔き、収穫をする

種を蒔き、7月~8月ことに収穫を行います。
約1m程度の背の高さになり、先端には色のある花が咲きます。
やがて丸い実がつくようになります。
茎から繊維を採るのですが、実からも亜麻仁油(リンシードオイル)という印刷用のインクに使用されるオイルを抽出することができます。

フラックスの種

 

 

レッティングを行う

実をつけたフラックスは根っ子から引き抜かれ、2ヶ月程度その場に置いていおきます。
その期間は非常に重要で、生産者は日々の天候を確認しながら経験を最大限に活かしてフラックスが最高の状態になるように慎重に手入れをします。
太陽の光、雨、風をたっぷりと味わい熟成発酵したフラックスはロールにして収穫されます。
自然の力のみを使用したナチュラルな方法で、レッティングと言い、レッティングとはフラックス植物の芯の繊維の周りにある不要な部分を取り除きやすくするための重要な役目をしています。

フラックス畑の乾燥

 

スカッチングを行う

レッティングが終了すると、次にスカッチングを行うための加工場に運ばれます。
スカッチングとは、フラックスの芯の外側部分を取り除く作業のこと。
激しく叩きほぐすことで外側がバラされ、リネンになるための内部部分の繊維を取り出します。
フラックスの繊維は非常にしっかりとしているため、激しく叩かれた程度では切れることはありませんので、この方法、スカッチングがずっと続けられています。
スカッチングを行い、繊維を出しながら「良質な繊維」と「良質でない繊維」に分けることで、リネン糸にするものやロープにするものなどの基準になるのです。
また、スカッチングで叩きほぐすことで出るフラックスの外側部分も紙などにしっかりと利用されます。

 

ハックリングを行う

スカッチングで取り出した繊維を櫛で髪の毛を梳かすように梳いて、リネン糸にするための不純物をなくしていく作業です。
それと同時に、繊維の長さを2つに小分けしていく事も行います。
長い繊維は一等亜麻と呼ばれ細番手~中番手に使用し、短い繊維は二等亜麻と呼び、太番手に使用するので非常に重要な作業とされています。
ハックリングを行うことで非常に美しいフラックスの表情が合わられてくるのです。

 

紡績工場へ出荷

レッティング、スカッチング、ハックリングを行うと遂に紡績工場へ出荷されることとなります。
この一連の流れがあり、やっと紡績を行い、リネン糸が作り出されます。

 

フラックス生産における、最大の難問

リネンの原料、フラックスを生産するにあたって一番難しいところが生産するためのサイクルです。
フラックスは一つの畑で栽培~収穫を行うと、6年~7年程度は同じ畑でのフラックス栽培はできません。
フラックスを育てるために畑の栄養分が殆どなくなってしまい、フラックスの品質や収穫量が大幅に低下してしまうことが理由となります。
その為、ヨーロッパ中のフラックス畑で様々なタイミングでフラックス生産を順番に行う必要があるのです。
また、1つの畑で収穫が終わり、6年~7年の輪作を行います。
主に小麦やとうもろこし、じゃがいもなどを育てて土に栄養を蓄える事が必要とされています。

小麦

 

 

良質なフラックスに必要されるのは厳選する目

毎年非常に膨大な量のフラックスが生産されますが、ヨーロッパで生産されたフラックス全てが良質なわけもなく、その中から良質なものだけを厳選する必要があります。
それには、人間の経験の目と勘が必要になってきます。
フラックスの繊維の長さや質まで、検査で調べることができますがその中からも厳選する必要があります。
大量のフラックスを目で確かめて触って決めることでこだわりの生地の仕上がりにつながっていくと考えられます。

 

そんな良質なリネン生地でも「ネップ」というものが存在します。
ネップについて詳しく説明している生地がありますので下記も併せてご覧ください。

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リネン生地

 

まとめ

フラックスの生産は容易くできることではなく、非常に手間のかかる膨大な農産業です。
畑でフラックスを生産し、収穫をすると6年~7年の間に輪作を行わない限り同じ畑でフラックスを生産することできない。
また、ヨーロッパ人は物に対して日本人とは異なり、孫の代まで使えるように品質にこだわるので生産者もそれに答える必要がある。
ヨーロッパでは、フラックスの生産量が全世界で9割を占めており、レッティング、スカッチング、ハックリングまでを行い、紡績会社に出荷を行うことでやっとリネン糸が誕生することがわかりました。
大好きなリネンがどのように作られるのか、一連の流れがわかったかと思います。
是非、リネンを扱う時にふんわりでいいので思い出してみて下さい。

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