デニム生地の水通し方法を解説

  • 2024年3月11日
  • 2024年3月11日
デニムコート

デニム生地の水通し

デニムといっても様々なデニムがある。
当オンラインストアで取り扱っているデニムでも、3.5ozの極薄デニム~12ozのしっかりとしたデニムまで。
洗い加工は行っていないものでも水通しをしなくてもいいのでは?と思うような初めから柔らかいデニムもある。
そして、デニムといえば「インディゴ染め」。
インディゴ染めは非常に特徴的で、色落ちを楽しめることと、独特な発色で魅了されるインディゴファンも多いのが事実。
そんなインディゴ染めだから。デニムだから悩んでしまう水通しについてお話ししよう。

※一つ先にお伝えすることは、「水通し」には様々な方法があり、当店がお伝えする方法が「絶対的」なわけではない。
児島の職人なら「こうしたい」という声を参考にした考えでお伝えする。

 

まずは知りたい、デニムとは何か

当ブログを読んでいる方はデニムの水通しについて不明なことがある方がほとんどだと思う。
まずは手元にあるデニムは本当にデニムなのか。それともデニムライクなのか。そんなこともついでに確認していただきたい。
基本的にデニムは、「縦糸をインディゴ染めに先染めした糸」を使用した生地のことをそう呼ぶ。だが、この縦糸がインディゴ染めでない場合であっても生地名としてデニムと呼んでもおかしくはない。
言いたいことはインディゴ染めか、インディゴ染めでないかを判断することで水通しの際に気を付けるポイントが大きく異なる為、はじめに確認を行いたいポイントのひとつである。

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デニム

 

 

インディゴ染料は993%色落ちする

993%などありえない数値を見出しとして書いてみたが、絶対に色落ちするという意味だ。
皆が知っている「デニムの水通し、洗濯は単独で」「濡れているときは他のものへの付着で色移り注意」。
そんなことは当然の当然で行ってほしいポイント。
何故インディゴ染めは色落ちがするのかというと、合成インディゴは極めて接着性の低い染料だからで、インディゴの特徴で糸の中までしっかりと染まることのない「中白」という現象が起こり、洗濯、着用を繰り返しているうちにどんどんと中の白い部分が表れてくる現象だ。
詳しくは、デニムの染料 インディゴ染めと藍染めで詳細を確認できるので併せてご確認いただきたい。

 

インディゴ染め

 

本題の水通し方法

さて、ここからが本題の水通しについて。
デニムの水通しをはオンスが大きくなればなるほど糊を使用して製造するため、糊の除去が柔らかさの秘訣となる。
当店で扱っているデニムでは、8オンス程度までは多くの糊を使っていないので、比較的通常の水通しで完結させていただいて大丈夫。
だがそれ以上になるとしっかりと糊を取るための水通しが必要となってくるのだ。

 

熱いお湯を使用して糊をとる

先ほどお伝えした通り、製造時に糊を使用する。
その糊は熱を与えることで溶けだし、少しずつ水面に浮かんでくる。
おおよそだが、60度程度のお湯を目安に使用するといいと児島の職人に聞いた覚えがある。
60度以上のお湯を使い、生地全面が水に浸かるようにすることで、生地表面の糊を水温で溶かす方法。
焦らずにじっくりとお湯につけてることを意識して行う。
時間が経つにつれてお湯の温度も少しずつ下がってくるので、途中でお湯を変えるのも良いと当店は考えている。

 

お湯を捨てて、水で再度洗い込む

お湯で糊をしっかりと取った後に、まずはその水を全て流してしまおう。
そして再度、水を溜めてデニム生地を水に漬け込み、手で丁寧に洗い込むように生地を揉み込もう。
それをすることで、インディゴ染料が溶け出して青い水に変化していくことが分かる。
青い水を捨て → 水を再度溜める → 揉み洗い → 青い水を捨て → 水を再度溜める → 揉み洗い
何度かこの流れを行おう。やめるタイミングは、適度なところでOK。
最初にも伝えたように、インディゴは絶対に色落ちするので、やめるタイミングは自分のお好みで大丈夫だ。
※インディゴの色落ちを止める為、酢を入れるなどを聞いたこともあるが、当店ではその方法は推奨しません。

 

ためらわずに縮ませてしまう当店の考え

当店の考えでは、最初の段階で一気に生地を縮ませることでデニムらしく、頑丈にラフに使える作品になると考えています。
水通しの際にお湯を使用するということは、冷水の場合より生地を縮ませる原因になる。
しかしそれをためらわずに行うことで、後のトラブルなどが起こりにくくなるメリットがある。
現に当店が原反洗いを行っている工場も、当ブログでご紹介させていただいた似たような方法で加工を行っている。
プロの作業を一般家庭で行えるような方法に変化した内容だと言える。

 

風合い重視で乾燥機もかけたいところだが…

 

水通し後、乾燥をさせる際に「乾燥機はNG」ということは基本中の基本。
しかしながら、乾燥機にはメリットも存在するのは確か。
デニム生地は最初の状態では糊も付着している為、固い特徴がある。
水通しを行い、乾燥は平干しや吊り干しなどが一般的だが、乾燥機は高温で一気に乾かすことができる為、乾燥の際に生地が中で揉まれる特性を持っている。
揉まれながら乾燥が行われることで非常に柔らかな風合いに仕上がる。
工場で行われる「タンブラー乾燥」の家庭版と考えていただくとわかりやすいだろう。
だが、これを行うには非常にリスクがあるのも確かである。
そのリスクとは「インディゴ染料」で、濡れた状態で乾燥機に放り込んでしまうと乾燥機内にインディゴ染料が付着してしまい、他の衣類などに色移りしてしまうリスクがある。
乾燥機をかけると柔らかさが増し、防縮加工を行っているデニムは乾燥機による縮みが非常に少ないため、メリットが多いのは確かだが問題は色移りだ。

 

児島の職人が言う「乾燥後に乾燥機がいいのでは」

本件について、当店が自ら児島の職人に話を聞いた。
彼らは通常、生地を大きな窯で洗いをかけた後、業務用の大きな窯で一気に乾燥させ、生地を揉み解す。
その作業を行った後は、インディゴ染料が乾燥機に付着しているので内部清掃を行う。
ご家庭であるのは家庭用乾燥機になるので、そうもいかないのが現状だ。
そこで、児島の職人が提案したことは、水通し後に平干しや吊り干しで乾燥を行い、しっかりと乾いた後に乾燥機をかけると若干の柔らかさが増すという。
乾燥後は濡れている状態とは異なり、インディゴ染料も付着しにくい為、なんとも家庭で可能な合理的な方法だと感じた。

デニム乾燥機

 

最後に

今回はデニム生地の水通しの方法について、考えてみましたがいかがだったでしょうか。
水通しの方法も様々な方法があり、どれが正解というのはないが、自分でやりやすい方法で行うことがいい。
当店が紹介した今回の水通しの方法は、本場の児島の職人が作るデニム生地にいかに近づけることができるかと思い、紹介させていただいた。
生地の特性に合った水通し方法を取り入れて、作るときにも、着用するときにも少しでもより良い素材になるように気を付けましょう。

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