メルトンフリースは水通しが必要か考える

  • 2022年8月27日
  • 2023年3月18日
メルトンフリース

メルトンフリースの水通し

秋冬になると当店で非常に人気のあるメルトンフリース
ふんわり柔らかくて、もちもちしていて、レーヨン混で滑らかなフリース
さて、このメルトンフリースは水通しが必要か不要か。
大変多くの質問を頂きますので、ここに書いて知ってもらおうと思います。
皆が悩むそんな問題に触れていきます。

当店のメルトンフリースはこちらから

 

 

混率から考えてみる

メルトンフリースの混率をまずは探ってみよう。
メルトンフリースの混率は ” レーヨン25%、ポリエステル75% ”
ん~、なんとも微妙な混率でこれだけでは水通しが必要かわからない。

基本的にポリエステルの場合は水通し不要と考えていいが、メルトンフリースにはレーヨンをブレンドしている。
レーヨンは、水に弱いためレーヨン100%やレーヨンが多く含まれている生地はドライクリーニングが必要です。
しかしメルトンフリースはレーヨンが25%の混率なので数値だけではわからない現状である。

 

試験データで考えてみる

全ての生地があるわけではないが、生地には試験データというものが存在する。
その試験で確認できることは下記のとおりである。

  1. 堅牢度 (染色して色が付き、洗濯や摩擦など様々な要因でどの程度の色落ちが生じるかの検査)
  2. 物性検査(水洗いやドライなどで縦と横方向に対してどの程度の縮率があるかの検査、及び破れやすさの強度の検査)

今回考えるべきポイントは、②の物性検査の水洗い時の縦方向と横方向の伸縮率に対して。
検査内容としては水洗いを行い、 ” 吊り干し ” で乾燥した内容。

 

スタッフ
※ニット生地は組織上、伸縮性がある素材なので水通し時に吊り干しは避けてください。
吊り干しで感想を行った場合は無駄な伸びが生じてしまい、思わぬトラブルを巻き起こしてしまいますのでご注意を。

 

さて、肝心の試験データは下記のとおりでした。

 

試験方法 たて
(ウェール)
よこ
(コース)
水洗い寸法 変化率(%) JIS-L-0217
106法 吊り干し
-0.7 0.4

 

水洗いを行い、吊り干しで乾燥した場合で縦方向に0.7%縮み、横方向は0.4%伸びています。
縦方向が0.7%ということは、ほとんど縮まないと考えていいでしょう。

 

実際に水通しを行ってみた

しかし、やっぱり実際に水通しを行ってみることが一番。
当店スタッフがメルトンフリースを水通ししてみました。

2通りの方法で水通しを行うため、2枚のメルトンフリースの生地を用意した。
今回試した水通し方法は下記の通り。

  • たっぷりのお水に数時間じっくりと浸透させる方法
  • 霧吹きで満遍なくしっとり湿るように水を吹きかける方法
  • 乾燥方法は風通りのいい場所のメッシュの上に平置きで上下の通気性を良くして乾燥

 

水通し前の縦方向の長さを確認

メルトンフリースの水通し前

縦のサイズはおおよそ25cm弱。

 

水通し前の横方向の長さを確認

メルトンフリースの水通し前

横のサイズはおおよそ33cm程。

 

縦サイズ25cm×横サイズ33cm

 

このサイズがどのように縮むのか。
試験データでは 縦 -0.7%、横 +0.4% という結果が出たが実際の水通しはどのような結果が出るのか楽しみです。

 

実際の水通し結果

時間をかけて水通ししたメルトンフリースが乾いたので、水通しの結果をさっそく見てみよう。

縦方向の水通し後の縮率確認

メルトンフリースの水通し前

試験データと同様という結果は出ませんでした。
水通し前の長さが25cm弱に対して2通りの水通しパターン両者とも水通し後の長さも25cm弱。
試験データでは -0.7% という1%弱ほど縮む数値が表示されていたのに対して、今回の水通しでは縮んだ形跡が一切確認できなかった。

縮率のパーセント表示でいえば  0% という結果が出ました。
これはかなりの朗報で、基本的に縦方向は縮まないと考えていいのではないだろうか。

 

横方向の水通し後の縮率確認

メルトンフリースの水通し前

水通し前の長さが33cm程に対してこちらも2通りの水通しパターン両者とも水通し後の長さもまさかの33cm程。
これも縮率  0% という結果が出ました。

 

水通し後の気になる風合いの変化は?

レーヨン25%、ポリエステル75%のメルトンフリース。
レーヨンは水に弱いのが特徴の素材ということで水通しを行った場合、更にはお家で洗濯を行った場合の風合いの変化について。
今回は洗濯は行っておりませんので、あくまで水通しを行った後の風合いから洗濯を行った場合のことも考慮して考えてみます。
また、水通し方法も「霧吹きで全体を湿らせた」方法と、「がっつり水につけこんで数時間置いた」2種類の方法がありますので2つの方法も比べてみよう。

 

霧吹きで全体を湿らせた

霧吹きで満遍なく水を生地に浸透させて、少し手で絞った後に整えてそのまま平置きで乾燥させた場合。

風合いの大きな変化なし
大きな変化は見られませんでした。
レーヨンが入っているのが要因で、水にさらすだけで風合いが変化するということはなさそうです。

 

がっつり水につけこんで数時間置いた

バケツにたっぷりと水を溜めて数時間つけて放置。
その後、手で少し絞った後に整えてそのまま平置きで乾燥させた場合。

風合いの変化少しあり
少しだけ変化がありました。
生地が縮んだなどはありませんが、なんだか毛足が少し寝てしまったような感じ。
大きな変化ではなく、許容範囲と言えばそうですが気になる人は気になるほどの変化です。

 

水通し後の両者の参考写真

メルトンフリースの水通し後

 

写真では少しわかりにくいですが、「がっつり水につけこんで数時間置いた」ほうが少しだけメルトンフリースの「ふわっと感」が損なわれてしまっています。
やはりそれは、メルトンフリースにはレーヨンが入っている為、長時間水を繊維に浸透させたことが要因かと考えられる。
なんとなくふわっと感がなくなってしまったようなその風合いがOKかNGなのか。
以下の「最後に」で私たちの考えも一緒に記載していきたいと思います。

 

最後に

私たちは、生地を提供する立場でお客様に少しでも綺麗な作品を作っていただき、長く愛用していただけるように最善の方法をご案内させていただいております。
私たちが一番お勧めしている水通しやお手入れ方法は、「霧吹きで全体を湿らせた水通し」、そして洗濯方法は「ドライクリーニング」です。
この方法が、繊維へのダメージがなく長く作品を愛用できる方法です。(絶対的な正解ではありません)
しかし、現実的に毎度ドライクリーニングを行うのも面倒でお金もかかるのが現実。
特にお子様用の作品は簡単にお家で洗濯したいもの。

これは使い手の人の考え方で変わってくるので、どのお手入れ方法でも不正解は無い。です。
お家の洗濯機でざぶざぶ洗う(おしゃれ着洗いコースをおすすめ)のも良いですし、ドライクリーニングで丁寧に扱うのも大切にされていることで非常にいいと思います。
しかし、お手入れを億劫になり、「手が出せない素材になる」、「ハンドメイドがやりたくなくなる」などネガティブな方向にいくようであれば、気楽にご家庭でお洗濯をされるのが一番だと思います。
今回のメルトンフリースは水通し無しでも十分使える素材だということが分かりました。
お洗濯の方法は、各個人の考え方によって使い分けていただけたらと思います。

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